『違国日記』〜コミュ障三十路美人作家と子犬系JCの訳あり同居の話〜
『違国日記』
コミックスは、絵とストーリーそれに世界観が自分好みじゃないと買わない(2/3を満たしていれば買ってしまうこともあるが)。意外とそんな作品は少ないがその点『違国日記』はドストライクで。既刊5巻。
少女小説家の高代槙生(まきお)は一人暮らしの自宅で執筆をしているが、両親を事故で亡くした姪の中学生、朝(あさ)を後見人として引き取ることになる(ほとんど勢いで)。槙生はいい年をして人見知りだが、適度に空気を読んでくれる朝とはそれなりにうまくやっていけそうだった。
朝はとても悲しいはずだが間隔が麻痺しているのか泣くことも出来ず、とりあえず新しい生活に順応しようとする。槙生はそんな姪を気遣いつつも、自分の自尊心を傷つけてきた亡姉(朝の母親)の言動がフラッシュバックしてきて苦しくなったり、他人が生活空間にいること自体にストレスを募らせていく。小さな衝突を繰り返しながらも日々大人になっていく朝と、外の世界とバランスを取りながら未熟な大人なりにこちらも成長していく槙生だった....
巻頭の死亡事故以降は何でも無さそうな日常が綴られていくが、槙生と朝の感情や二人暮らしの生活感を細やかに表現している絵と言葉が素晴らしい。槙生の繊細さと知性に共感し、朝の幼さの混じる素直さを愛しく感じたり。槙生を訪ねる友人たちが朝に対しても構えずに交流する場面は羨ましいほど。
私が好きな槙生のセリフ:
「わたしは大体不機嫌だし あなたを愛せるかどうかはわからない
でも わたしは決してあなたを踏みにじらない」
「あなたは 15歳の子供は こんな醜悪な場にふさわしくない
少なくともわたしははそれを知っている もっと美しいものを受けるに値する」
背景の景色が細かく書き込まれておらず、多分つとめてラフな感じのタッチも好み。いい年をして人見知りで、きちんきちんと物事を片付けられない槙生に自分自身を見るようでした。独りが好きでいることは決して恥じることではないと励まされる気持ちになります。