Oyanecoのティータイム

本と読書にまつわる雑感。たまに映画。

『娼年』

娼年

石田衣良

集英社文庫

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娼婦(夫)+少年 = 娼年

秀逸なタイトル。背表紙に「しょうねん」とルビがある異例の装丁。娼年はすなわちcall boyです。

 

20歳の大学生リョウは大学に行かずにバーテンダーのアルバイトをしている。初体験も早かった彼は女性にも飽きて空虚な雰囲気を漂わせていた。ある日、友人のシンヤ(ホスト)がバーに連れてきた年上の女性 御堂静香。彼女はセックス上手をアピールするシンヤではなくリョウに目を付ける。静香は女性専用の高級男子デリヘルのオーナーだった。あなたのセックスの値段はいくら?という挑発に乗るようにして静香の目の前で女性を抱くリョウ。やがてリョウは静香のもとで女性たちの相手をするように。リョウは静香を慕うようになり、結ばれることを願うが彼女にはある秘密が....

 

女性が若い男性を買うという設定の斬新さ。女性が主体的に性体験を求めていくことをタブーとしないしなやかさ。初めは戸惑いながらも、自分のセックスで内面をさらけ出していく女性たちを目の当たりにするうちセックスワーカーを天職と覚えるリョウの開眼を石田衣良はオサレな文章で美しく描き切っています。

 

セックスビジネスを語るとき、現場にいる人への配慮はどうしても必要になるしその人たちの仕事観も一様ではないだろう。『娼年』ではリョウがセックスビジネスを肯定的に捉え、顧客である女性たちの人間性を年齢にかかわらず可愛いと感じる感性と知性があるため、女性の性が解放されるかのようなさわやかな印象を与えている。ただ、リョウは桁外れの報酬を受け取りながらも生活のためにこの仕事をしているわけではなく、顧客の女性たちは高額を支払って関係を求めるほど性に対して意識が高いわけで。リョウをさげすんだり傷つけたりする顧客もいない。それって冷静に考えたら俺得ではないか。

逆に女性のセックスワーカーはおそらく顧客から丁寧に扱われることばかりではないだろうし、やむを得ずその仕事を選択せざるを得ない人もいるだろう。必然的に、リョウのような視点はなかなか持ちえないのでは。

 

松坂桃李主演の映画も、観ましたよ、ええ。静香は舞台『娼年』の高岡早紀の方がよかったんじゃないかな~...真飛聖が何かゴツかった。セックスの描写はね~、あまり気持ちよさそうじゃなかった。見るのがいたたまれないっていうか。そうじゃないもっと優しく触ってほしいな~なんて思ってしまって早く濡れ場が終わってほしかった(なのに濡れ場しかない映画 - -;)。友人(女性)と観たんだけど、二人で疲れ果ててしまったよw